アッシャー・フィッシュ(Asher Fisch、1958年イスラエル生)。
ダニエル・バレンボイムの愛弟子としても知られている人です。
9月に来日するバイエルン国立歌劇場『魔笛』の指揮を担当する
ことが決まった今春、読売新聞のインタビュー記事の中に、
テンポに関する興味深い見解が紹介されていました。
それを何度も頭の中で反芻しています。
「正しいテンポを見出すのが最も難しい。
それは、作品の興奮を失うことのないまま、
明確に歌詞を歌い上げられる速度。
ドロッと歌いたい人もいるが、テンポを緩めると
つまらない作品になってしまう」
音楽に限らず、同じ意味、同じ内容を伝えているだけなのに、
ある人は人を惹きつけ、ある人はそっぽを向かれてしまう。
そんなことって、この世の中に数限りなく起こっていて、
その「伝わらない理由や対処法」がつかめずに
苦しめられる人、結果的に損をする人も大変多いと思います。
単語一つの選び方、テンポの設定にまで、理由が明確に
なるまで突きつめ、それを自分の選択として世に問う、
という作業をやっているかどうか、ということ。
「今生きている人たちの多くが「心地良い」と思うであろう
ことと、自分のものさしとの照らし合わせ。
通信方法の変化によって、今は気の利いたことを手短に、
そう、条件反射のように直ちに発信できる能力ばかりが
評価されがちのような気がして。
そこだけに絞られ続けていくのは怖い気もして。
※読売新聞 2017年4月27日(木)夕刊
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