ベルリンのドイツオペラ。
モーツアルトのオペラ『イドメネオ』。
イスラム教預言者ムハンマドなどの首を示す演出が
波紋や論議をよび、結局公演を自主規制(中止)しました。
この演出が初演でないことを知ると、
私たち人間の事情、世界の情勢のほうに
変化が起こっているのがわかります。
かの地では、音楽ファンも政治家も一般人も、
上演すべきだったのか否か、議論を戦わせているようですね。
28日付けの朝日新聞(夕刊)記事によれば、
独テレビの27日の世論調査では、回答者約2,600人の88%が
「上演すべきだ」と答えている、とのことです。
「上演自粛がテロに屈したことになるから」という理由のようです。
いつも、どこでもそうなのですが、
芸術や芸術家の評価には、その人の芸の力とは遠いところの
出自や宗教や政治や置かれている環境や、噂やスキャンダルなど、
様々な尾ひれがついてまわります。
それを伝える仕事の一端を担う者としては、
様々な価値観を持つ人たちの立場を、
想像力までも駆使して思いやれる力を養うことと、
雑音や尾ひれのまったくない状態まで剥ぎ取って中身を見極め、
それを自分の中で消化して伝える勇気と希望を持ち続ける、
ということが、必要なのではないか、と思います。