日が暮れる直前に家路を急ぐ時、
「もう、身構えるほど大気が冷たくなくなってるなぁ」と気づきます。
つと、空が透き通ったような濃いブルーに輝やいているのを
胸の奥でツーンとする、哀しいような気もちを膨らませながら鑑賞。
遠くには、はかなげな月が光を投げてくれています。
先日も、誰かが笑っている口のような、弓なりの月を見たばかり。
湿った甘やかな香が、どこからともなく漂ってきます。
それは、花の香よりも、大地や木々の放つ香、といったもの。
そうしている間にも、空はずんずん黒ずんで、
ごく普通の夜の色へと落ちてゆき、冷え込みが進み、
「ああ、まだやっぱり冬なんだ」と思い直す、そんな夜。
ほんの一瞬、暗闇に落ちる直前にも、春の気配を感じる頃になりました。
ときどき、「気配」というのは、どんな様相なのかしらん、と思うんです。
空にかかる雲みたいに、ところどころに濃い部分があって、それに触れた時に
感覚の鈍い人間にも「ああ○○の気配だ」って、感じられるのでしょうか。
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