きだみのる(1895年生~1975年没)、本名:山田吉彦。
15歳で親元を離れ、16歳で家出~のちのアテネ・フランセ
創立者と出会い、フランス語やラテン語を自由に操る
バリバリのインテリになったかと思えば、
いくつもの有名校はどれも中退(つまり学閥とも一生無縁)で、
たくさんの訳書や著書があるのに、
その印税で静かな生活を送ることもなく、借金魔でもあったとか。
スパイと疑われたこともあり、著書が物議をかもしたこともあった人。
山奥の廃寺に独りで住んでいたこともあった、という
(ある意味)スーパーマンでした。
かの開高健も一目置いていた~少なからず影響を受けているようだ~
ということも、この本で知りました。
きだのように、存命中に華々しくもてはやされることのなかった人の
埋もれたまま消えてしまいがちな活動に、注意深く光を当てながら
考察し、丹念に編まれたこのような本を前にすると、
内容をどれだけ深く理解するか、という問題以前に
いま生きている自分の姿勢について、
ただただ厳しく問われているような気がします。
きだは、「客観的な観察」と「疑うことを知る精神」が、
社会学に携わる者の忘れてはならないことだ、と主張した、と
著者、太田越氏は教えてくれているのですが、
さらに以下のように書かれています。
「疑うことを知る」精神は、自分自身にも向かっていた。
彼は人々の営みや社会のありかたを見るだけでなく、
それを観察している自分自身の心の揺れまでも
測定しようとしていた。」
※『きだみのる 自由になるためのメソッド』
太田越友明(おおたごし・ともあき)・著
未知谷・発行 07年1月初版 3,000円+税
ISBN978-4-89642-182-8
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