10年前の8月31日、あなたはどこで何をしておられましたか。
私は、ドイツ南部のダッハウという町で、
第二次世界大戦の強制収容所跡を見学していました。
収容所を見学したい、というのは、私のかねてからの願いの
ひとつでしたが、この日、それが初めて叶ったのでした。
ダッハウは、ドイツ軍の収容所の中では、
少なくとも最も残忍なことが行われたわけではない、と
言われていますが、それでも見学内容は私にとって衝撃的でした。
「少々つらいことがあっても、前を向いて顔を上げて進む」と
自分で自分に誓った場所になったのですが、
その場所から一歩出たその時に、ダイアナ元皇太子妃の
訃報を知ったのです。
(同行の友人が、カーラジオでダイアナ元皇太子妃の訃報をキャッチしました。)
ですから、決してこの日を忘れることができません。
映画『クイーン』は、このダイアナの事故直後のイギリス王室の
混乱を、すっぱりと切り取って見せてくれました。
すでに、エリザベス女王を演じたヘレン・ミレンが
その好演により、高い評価を受けていますし、
女王の内面を細やかに率直に描こうとしたその努力、
陛下とそのファミリー、イギリスの首相が、
ともに現在も当時のままの位置におられる、
という事実からも、人々の好奇心をそそった作品です。
黒い中ヒールのプレーンなパンプス、仕立ても素材も良い
裾にフレアーのかかったシンプルなワンピースに身を包んで
公務を次々にこなす女王陛下。
3連の真珠のネックレスや、左胸に留められたブローチも
気品に満ちたその姿の一部に、溶け込んでいます。
アウトドア用深緑色のジャケットをはおり、上等の絹のスカーフを
頭からすっぽり被って、ばりばり独りきりで山道を運転したり、
躾の良い犬たちと山歩きをしたりする姿も、とてもおしゃれな陛下。
でも、もしかすると、用意してあるものを、そのまま着るだけ?
あんまり自由にチョイスすることはできない??わかりません。
たくさんの感情や衝動を、もし押し殺して生きる必要が無かったら、
陛下はどんな女性として人生をおくっただろうか、と考えながら、
ファッション・チェックでも楽しませてもらいました。