NHKテレビで先日放映された番組
「オペラ座の弁慶 團十郎・海老蔵 パリに傾く(かぶく)」。
頭の中にその残像を何日もころがしていたい、
そんな強烈なものを観たのは、久しぶり。
パリのオペラ座・ガルニエが、初めて彼らを招聘し、
本格的な歌舞伎公演が行われた模様を紹介していました。
安宅の関で、通り抜けることをようやく許された弁慶が、
幕切れに、万感のこもるお辞儀をします。
この場面が、クローズ・アップで録画され、
パパ (團十郎)と息子(海老蔵)の両者を
見比べられるように編集されていました。
本当は、番組では、「ダブル・キャストそれぞれが、
別の演出方法をとり、(お辞儀の後で)花道を引っ込む様子を
ガルニエでどう演ずるか、見比べさせる」という意図だったのですが、
私はこの親子のお辞儀(だけ)に、目を奪われました。
團十郎のお辞儀は、目を伏せ、肩の力を抜き、しかしながら、
万感のこもった祈りのようなものを全身から発光させるような、
それは素晴らしいもので、これだけで思わず息をのみました。
何十年もかけて会得した芸の力だけになせるもの、と
簡単に言ってしまうのが失礼なような、
それはそれは素晴らしいものだったのです。
姿や声に恵まれ、体力もある海老蔵には無い何かが、
確実にそこに在りました。
「なかなか、ぞっとするような‘芸の力’、
‘やられちゃったー’というような舞台、
そんなものを、とんと観ることができなくなったね」と
知人たちとも話し合うことが多いこの頃ですが、
気をつけて観続けていると、ごくごくたまに、
「確かに、まだ在る」と、うれしさに鳥肌が立ち
夢でうなされるようなものに出会えるのでした。
「もう駄目かも」という絶望の淵まで待って、
やっと「ぽつん」とひとかけら、見せてもらえるような感じです。
奇遇ですねぇ! 私もこの番組をみました。
私が気になったのは舞台背景を任されている絵師(でいいのかな?)の粘り強さです。
團十郎・海老蔵親子にめちゃくちゃダメ出しされているのに、怒ることなく寡黙に修正をし続ける姿に感動しました。
「なんでここまでできるんだろ? 海老蔵なんてめちゃくちゃ年下なのに...」
でも、公演を見て納得しました。ここまでの芸を持っている人達といっしょに仕事ができることに誇りがあるんでしょうね。きっと。
などと、Calvinaさんとは別の事を考えていたのでした(笑)
投稿情報: Nariken | 2007/06/12 21:47
Narikenさん!
そうですねぇ。
あの組織独特の権力構造というか、考え方。
一歩外に出たら、全然通用しないようなものがあると思います。
それに納得できなければ、当然仕事はできないでしょうね。
芸の継承者のほうでも、本当に元からの素養が無くても、足りなくても、
周りが育てて支え、いつもトップに立ち続け、場数を踏むことで
その力をついには蓄えていく、というものでもあるかもしれません。
(冷め過ぎ??)
投稿情報: calvina | 2007/06/13 12:01