『レオナール・フジタ展』を観てきました。
「乳白色」の肌の美しさ、滑らかさを堪能しました。
あれは、肌そのものを描いたのではなくて、
肌の感触そのものを描きあらわしたかったのですね。
まとめて間近に観ることができたのは幸運でした。
それでも、これまでもこれからも、作品群よりももっと気になるのは
藤田さん自身がいったいどういう人だったのか、ということ。
日本を脱出し、フランスに帰化し、カトリックの洗礼を受け、
最後まで帰国しなかったことや、作品の管理の方針などなどにより、
詳細な情報を得ることが難しい人です。
戦争画をめぐる仕事やその評価についても、よくわかりません。
最晩年、日本のことを、懐かしいと思っていたのでしょうか。
愛用の道具の中に、墨と硯、使い込んだ糸切りバサミや
手づくりのそろばんなどを見つけると、
「遠ざかって雑音をシャットアウトしたかっただけ」なのかな、
とも思えるんですよね。
皆さんも、あの「うさんくさくておもしろい」格好の藤田さんの
肖像や写真を、ご覧になったことがあると思います。
おかっぱ、丸っこい黒縁眼鏡、機嫌悪そうな顔。
才能ある画家たちがひしめくパリで頭角をあらわすためには
まず‘見てくれ’でも目立つ必要があり、藤田さんはそこもきちんと
計算していたらしい、という論説も、読んだことがあります。
「一度見たら忘れられない、奇妙なスパイスが効いている」
という着こなしは、単純に「ダテ男だった」という言葉だけでは形容しきれません。
真似できない、ということは、ある種‘高度な着こなし’だったのかも。
今月2日、藤田さんの最後のパートナーだった君代夫人が亡くなりました。
現在私たちが手にとれる画集や回顧録には、この方の監修というか、
強い意向が盛り込まれていたようです。
「きちんとしたかたちで守り、出したい」と思っておられたのでしょう。
これからの作品管理の行方、回顧の方法、そしてこの画家の評価そのものが、
どのように推移するかにも、興味は尽きません。
猫もお好きでたくさん描き残しておられます。
「野生を残しているのに、飼うことができるから」
というのが好きな理由だったそうです。
この機会に、この猫だけの画集をチェックしてみます。
講談社 3,150円(税込)
ISBN:978-4-06-211844-6
なお、昨夏からスタートしたこの展覧会は、
この後仙台へ巡回し終了します。
※ 『レオナール・フジタ展』
2009年4月26日(日)~6月7日(日)
於:せんだいメディアパーク
http://www.ox-tv.co.jp/
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