アフガニスタンの支援を続ける中村哲医師の活動は
これまでにもさまざまな形でリポートされていますが
この本の半分は、澤地久枝さんのインタビュー、
残りは澤地さんの文章によって成っています。
特に興味深いのは、日頃ほとんど中村氏が
語りたがらない私生活と家族のことについて
かなり多くの情報が浮かび上がっていることです。
(澤地さんの、「根掘り葉掘り」引き出す努力と技術に驚きました。)
たった10歳で失った次男のこと、支え続ける奥さまのことなど、
考えさせられるエピソードが満載でした。
考えさせられる、と言えば、中村医師が衆議院に参考人として呼ばれて
発言している最中に、その内容を笑った議員がいた、という事実も・・・。
本書には、「議事録では(その人を)特定できない」とありますが
知らないもの、勉強していないことを、笑ったりやじったり議論したり
する議員がいなくならないのは、この件に限らず気分悪いこと。
(ま、隣りの人の投票ボタンを押す人もいたくらいですからね・・・。)
イスラム教の理解、という点でも、私たちの認識は浅薄ですもんね。
心に残った一節を、ここに。
『「全ての宗教が同じだ」と無原則にいうのではありません。
時代や地域によって隔てられていても、大きな影響を与えた教えは、
何か大切なものを「文化」として根づかせ、
それぞれに独特のスタイルを持っています。
私たちが感ずる「神聖さ」の根源は、
人が語りえない奥深いところで輝いている。
一方、その「事実」を人知は定義できない。
何かしら人の超えてはならぬ「神聖な空白地帯」を、
その地域と時代で共有できる形で戴いている。』
※ 『人は愛するに足り、真心は信ずるに足る --- アフガンとの約束』
中村哲・著 (澤地久枝・聞き手) 岩波書店
2010年2月初版 1,900円+税
ISDN 978-4-00-024501-2
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