« 比較はマズイことなのか。 | メイン | Camp Esperanza Chile!! »

コメント

こんにちは。
わたしは、この本を大人になってから知ったので、洋書セールのときに原文バージョンのを買って持っています。それで、元の日本語訳のをあまり気に留めてなかったのですが、本田錦一郎さんて、もしかして大学時代の教養(1~2年生時)に受講した「西洋文学」を担当していた教授だと思うのです。この本を翻訳していたって知りませんでした!図書館で是非探してみます!

本田先生の講義は、わたしは理科系でしたが、もしかして文系を目ざすべきだったかも。。と、迷いが生じたくらい、熱心に(私としては珍しく)講義を受けたのを思い出しました。数年前にお亡くなりになったと聞きました。

Asaさん!

こんにちは。コメントありがとうございます。

そうだったんですね、習っておられたとはびっくり!!
それではこの「本田訳」、ぜひチェックしてみてくださいね。
何故私がこの訳を好きだと言うのかが、わかっていただけると思います。

そうそう。本田さんは自分が学んだ母校で40年以上教鞭をとっておられた人だそうですね。
先ほど、その業績も以下で少し拝読したところです。
お写真もとても温厚そうな印象でした。
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/news/jihou/jihou0702/635_31.htm

「本田訳」を出した篠崎書林は、もともと学術研究書を得意としていたので、その関係で先生と篠崎でこの訳書を出すことになったのかもしれないですね。
その両方が新しい時代の波にのまれて、忘れる人も多くなり、今回の「村上訳」が出ることになったのだと思います。

こんにちは。書評、ありがとうごいました。とても興味深く拝読いたしました。
実は私自身、本田先生のゼミの末席を汚していた一人です。
本田先生が物故したゆえか本田訳が店頭から消えた時は大変寂しく思いましたが、かの村上春樹氏の手により再び日の目を見ることになったことは大変嬉しく思います。原作者シルヴァスタイン氏の意図、本田師への敬意を損ねず、しかも村上氏流に解釈を加えて訳されたようですね。
違いですか・・・ネタバレは控えますが、ある個所で強く感じました。「・・よね。」と断定的口調の村上訳に対し、「・・かな」と読者に問いかけ考えさせる本田訳。「愛の価値」に関わる部分なのでここでの表現の違いはかなり違った印象を与えるように思えます。本田訳は意訳ではありますが、個人的にはむしろ効果は原文に近い気がします。
後書きにてE.フロムの理論を引き合いに出している通り本田師は「無償の愛」の価値をより強く強調しようとしたんでしょう。大学の講義では『罪と罰』(ドストエフスキー)のソーニャの「愛」もよく引き合いにされてました。
一方、村上氏は「無償の愛」の先にも「相互的な愛」(共に分かち合う愛)があることを、どちらかと言えば強調したかったのかもしれませんね。
まあ憶測にすぎませんが・・・。

ken-sanさん!

コメントどうもありがとうございます!
わぁ、本田先生のゼミだった方からのコメントとは!!
とってもうれしかったです。

先のAsaさんのコメントにも感じたのですが、
本田先生の温かいお人柄と、先生の学問を通して皆さんに伝わったものが、
こうして脈々と生き、さらに広がっている、ということにもジンときます。


「・・よね。」と「・・かな」のところ。 そうそうそう。
ここが、ね・・・。ふふふふふ。(意味深な笑い)

私が習ったある教授が「日本はね、本当に多くの外国の文学作品を、
日本語で読むことができる、世界でも数少ない国だと思うよ。
みんなあんまり気づかないけれど」とおっしゃったことがありました。

これから先は、さらに「同作品について、多くの訳書を
比較しながら自由に楽しめる、世界でも稀な国」
になれば良いのに、というのが、欲張りな私の夢です。
出版の事情や国そのものの事情は、
これからどのように変化してゆくでしょうか、ね。

また遊びに入っていらしてください。

 私は本田先生の天下り先の大学のゼミの劣等生です。2009年に娘が生まれるにあたって慌てて本田訳を購入したのと村上訳が出版されたのと私が入院生活に入ったのはほぼ同時期です。村上訳を読んだ時に感じたのは、直訳的過ぎること、それでいてシルヴァスタインの意図と全く反すること。そして40歳で「おおきな木」を出版された本田先生と還暦近くになってこの本を訳した村上春樹の死生観の違いというか村上春樹の人生観の薄さ。本田先生は神風特攻隊に召集され終戦が後2日遅かったらあの名訳はこの世に無かったのです。だから私は少年が船を作って遠くに行ってしまうシーンと、死を覚悟し南の島に赴いた本田先生がダブるのです。そして泣いてしまうのです。
 そして私が初めて「おおきな木」を読んだのは小学校3年生のとき国語の教科書でのことです。この作品の国語のテストにいじめっこに「あんたバカなんだから30点取りなさい」と命令され、きっちり30点を取り、いつも満点を取る私がそんな点数を取ったものだから、担任の先生にめっちゃ心配されました。母にはことの真相がバレルとげんこつくらいました。 
 それで先生が退官なさった大学を見事に滑った私は滑り止めの大学で先生と出会いました。2年生の時、文学で「折口信夫」を「おりぐちのぶお」と仰った先生に「おりぐちしのぶですよ」と話し掛けその後先生には可愛がって頂きました。謝恩会の晩には「すし善」に連れて行って頂き、結婚式には祝電も頂きました。本当にお優しい方でした。
 ちなみに「おおきな木」の最初の方のページはパラパラ漫画になっているのはご存知ですか?後、私は二ヶ国語版も運よく入手しましたが日本語訳は本田先生ですよ。

しいますさん!

書きこみどうもありがとうございました。
ご返事が遅くなり、大変失礼しました。

当ブログを派手に公開・運営していないにもかかわらず、
こうして「本田先生に習いました」というコメントを
寄せてくださるかたが何人もおられることに
驚いたり喜んだりしています。

「劣等生」だなんて・・・。
先生から可愛がっていただけたような生徒さんなのでしたら
それはそれだけ魅力があった、ということですよ。
「えっへん」じゃぁないですか!

私は先生とは面識もありませんが、訳のテキストからも
そのお人柄を慮ることは(完全ではないにしろ)できると思いたいです。

二ヶ国語版の存在と、パラパラ漫画のことは、初めて知りました。
ぜひチェックしてみます!どうもありがとうございました!

また、こちらへ遊びにいらしてください。

私も35年程前、北大教養部で本田先生の講義を受けました。私自身は理系で、農学部に移行しましたので、本田先生の講義は教養部時代のみでしたが、大好きな講義でした。

パタリロさん!

こんにちは。書き込みありがとうございます。

わーっ!ここにも本田先生の生徒さんが!!
本当にビックリするやらうれしくなるやらです。
本田先生は、こういう形で人の心に長く残り、
さらにそこから育ち広がる仕事をなさっていたんですね。

細々やっているブログですが、また遊びにいらしてください。

この記事へのコメントは終了しました。

カルビーナの本棚

  • 後宮の烏
    2019年、集英社の夏の文庫キャンペーン「ナツイチ」でリストに入った人気中華奇譚。ドロドロしたところが無く、一冊で綺麗にまとまっているが、シリーズ化した。8月21日に3巻目が刊行される予定。 (集英社オレンジ文庫)
  • 長田 弘: 食卓一期一会 (ハルキ文庫)

    長田 弘: 食卓一期一会 (ハルキ文庫)
    ついに出た文庫版。ハードカバーの単行本とは味わいと用途が違うので、これはこれで欲しい、という人がたくさんおられるはず。個人的には、旅に連れて行きたい。

  • 白央 篤司: にっぽんのおにぎり

    白央 篤司: にっぽんのおにぎり
    地域地域に名産・特産を生かしたおにぎりがある。それらがアップの写真で順に紹介されているシンプルな絵本。元気が出て日本の食を見直すことができる。

  • 長田 弘: 長田弘全詩集

    長田 弘: 長田弘全詩集
    「全詩集」というタイトルをつけた新刊本が出た、と知った時、「まだまだ活躍していただきたいので、「全」というのは早すぎるのでは」と思った矢先の訃報に大ショック。ただ、長田さんが私の中に残してくれた「たしかな記憶」は死なない。むしろ育つ。

  • 串田 孫一、埴沙萌他: 光の五線譜

    串田 孫一、埴沙萌他: 光の五線譜
    写真を撮影したのは昆虫の栗林慧、植物の埴沙萌、動物の吉野信。これに一つひとつ文章を付けたのが串田孫一。その文章は、読めば読むほどに広がりを見せる物語だ。レイアウトは杉浦範茂が担当し、粋な遊び心で全体をまとめ上げている。

  • 松家 仁之: 火山のふもとで

    松家 仁之: 火山のふもとで
    ピースを一つ一つ自分で削りだし、磨き上げてから組み立てた精緻なパズルのよう。どこをどうチェックしても美しい。新潮クレスト・ブックス、『芸術新潮』、『考える人』に貢献した名編集者が転身、2012年7月に発表した初めての小説。フランク・ロイド・ライト、アスプルンド、北欧、建築、家具などに興味ある人は特に要チェック。

  • 安野 光雅:佐藤 忠良: 若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)

    安野 光雅:佐藤 忠良: 若き芸術家たちへ - ねがいは「普通」 (中公文庫)
    するする読める対談集。 『銀花』(文化出版局)の元編集長の発案で成った元本は、既に絶版。 対談に登場する芸術家、文筆家たちが何者であるか、というスポット解説も親切。「なにか特別なことをしなければ、この道は歩けないと思っている風潮はよくないと思う・・・」(安野氏による文庫版のあとがきより一部)

  • 高田 郁: 銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)

    高田 郁: 銀二貫 (幻冬舎時代小説文庫)
    熱心なファンが増えている高田郁(たかだ・かおる)さんの作品の中で、唯一、男性が主人公。他の作品と同様、爽やかな涙を誘い、すっきりした読後感をもたらす、という意味では同じ魅力を持っている。大火に何度も襲われる大阪の街が、その度に逞しく復興する様子を、2011年3月の大災害と重ね合わせて再読した。

  • 堀井 和子: アァルトの椅子とジャムティー

    堀井 和子: アァルトの椅子とジャムティー
    もう10年以上前に刊行されているのに、最近の北欧ブームに乗って出された類よりも力強い魅力が続いている。メディアに紹介されたブランド名、商品名から、同じものを購入したくなる人たちを尻目に、自分の審美眼と使用感を大切に、ものを選び取る姿勢そのものが心地良い。

  • 谷川 俊太郎: 詩と死をむすぶもの 詩人と医師の往復書簡 (朝日新書)

    谷川 俊太郎: 詩と死をむすぶもの 詩人と医師の往復書簡 (朝日新書)
    こういう類の本は、読むタイミングがうまく来ると読むし、それが来ないといつまでたっても手に取れない気がする。たまたま私の読むタイミングがやって来た、と感じて、最近一気に。「おすすめ」というよりも「ずっと頭の隅っこにとどめておいて、何かの機会に読んでみて」とお伝えしたい。

  • 堀井 和子: おいしいテーブル (集英社be文庫)

    堀井 和子: おいしいテーブル (集英社be文庫)
    「タコご飯の作り方」に引き込まれて手に取ったのが始まり。堀井さんの著書の中では、情報量が多いので、刊行直後に入手して以来、何度も読み返している。フランス・パリ郊外の旅、ふだんのメニュウやレシピの紹介などなど。カラー写真も多々。

  • : 武満徹対談選―仕事の夢 夢の仕事 (ちくま学芸文庫)

    武満徹対談選―仕事の夢 夢の仕事 (ちくま学芸文庫)
    この本には、妹分とも言える「エッセイ選」があり、08年12月6日に当ブログ本文でも取り上げている。存命かどうかは、私にとって、もはやどうでも良いのかもしれない。私の中で、ますますその存在が大きくなりつつある人のひとり。

  • 具 本昌: くらしの宝石

    具 本昌: くらしの宝石
    韓国の写真家、具 本昌(クー・ボンチャン)の作品集。英名"Everyday Treasures"。使い古されてゆく石鹸が宝石のように輝いて見える瞬間を捕らえ、閉じ込めた。この人の『白磁』という作品集(世界各地の美術館に収蔵されている朝鮮白磁の名作を撮りためたもの)にも、大いにひかれるものがある。

  • T.E. カーハート: パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)

    T.E. カーハート: パリ左岸のピアノ工房 (新潮クレスト・ブックス)
    いま、もう一度この作品を大切に読み返したい気持ち。音楽とどんどん離れてゆきそうな自分を、音楽のそばに戻すために。ノンフィクションだと知らずに読む人もいる、という。

  • ディック・フランシス: 再起

    ディック・フランシス: 再起
    「身体で知り考えたことは強い。それを書け。そして、その世界以外の人も虜にしろ。元騎手の作家、D.フランシスを読んでご覧」とは、ダンス評を書くように私を強く後押しした人の言葉。以来、彼のほぼ全作品を読破。

  • 山口 信博: 白の消息―骨壼から北園克衛まで

    山口 信博: 白の消息―骨壼から北園克衛まで
    久しぶりに出会った!と思った本。風雪に晒された骨に美を見る。今、こんな価値観に惹かれているところ。

  • まど・みちお: いわずにおれない

    まど・みちお: いわずにおれない
    96歳のまどさんへの聞き書きと作品集。 (14年2月28日、104歳で永眠されました。)

  • 長田弘: 人生の特別な一瞬

    長田弘: 人生の特別な一瞬
    05年3月初版。 「美術館へゆく」に、高島野十郎の蝋燭の炎の絵への言及が。

  • 三谷龍二: 木の匙

    三谷龍二: 木の匙
    しぃんと白い漆のそば猪口。木の匙。心地よい暮らし。

  • mitsou: 簡素なくらし

    mitsou: 簡素なくらし
    きりりと心を澄ましている暮らしぶり。何度も何度も読み返したくなる本。

  • 茨木のり子: おんなのことば

    茨木のり子: おんなのことば
    詩人・茨城さんのいくつかの作品集から選抜・編集されたポケットブック。「心の底にしいんと静かな湖を持つ人」に出会える人は、幸せ。