オーストリア・ウィーンで不自由なく暮らしていたユダヤ系の姉妹が
第二次世界大戦直前、暗雲が広がっていた都会を逃れて
スウェーデン南部の小島へ子どもだけで疎開し、
新しい家庭で養ってもらうことになります。
その生活と、姉妹(特に姉の目)を通した人間観察と感情の揺れを
繊細に描き出している作品。 四部作です。
ブログつながりのKateさんのブログで、
酷暑の最中にこの作品について知り
最近やっと読み始めました。
『トトロ』のサツキとメイを思い出しました。
姉妹は近所の別々の家庭に預けられます。
戦争期の疎開に限定しなくても、幼い頃に生活環境が急に変わったり、
転校を経験したり、知らない言語の中に放り込まれたり、
という経験がある人たちなら、「あぁ、自分の心にひっかかるフックが
ここにもあそこにも織り込まれている」と発見があるはず。
つまり、世界大戦の記録やユダヤ人問題にだけ焦点を当てた
‘重苦しさこってり’の作品ではない、ということも、
この作品の魅力の一つではないかと考えています。
北欧に興味ある人には、現地の人の生活の暦や習慣についても
拾っていただけるのが良いなあ、と思いながら読み進んでいるところ。
「ドイツ語とスウェーデン語は近いんだよ」と聞くことが多かった私ですが、
自分はどちらのネイティブでもないので、この説にピンときたことがありません。
ドイツ語をマザータングとして育った小さな人たちが、
スウェーデン語をどう捕らえ、どう習得してゆくのかを観察できる、
という面でも、たいそう興味深い作品です。
※ 『ステフィとネッリの物語』
第一部 『海の島』、第二部 『睡蓮の池』、第三部 『海の深み』、第四部 『大海の光』
アニカ・トール・著/菱木晃子・訳 新宿書房 各部2,000円+税
コメント