読んだことがない作家の作品群に入ってゆく際には
最初に「取っかかり」として何を読むのかが
自分の人生のスパンの中での読書を考えると
案外大切になってくると思うのですが、先月30日に亡くなられた
渡辺淳一さんの場合、どの作品が最も多く読まれているのでしょうかね。
私の「取っ掛かり」は、『光と影』(1970年直木賞受賞作)でした。
背筋が寒くなるほどの衝撃を受け、続けて二度読み返したのを憶えています。
中学生のヒヨッコには劇薬に近かったかもしれませんが、目の前にパーッと
「何か今までに見えなかった風景が開けるような感覚」があったのも事実。
キャリアを重ねられるにつれて、エロスと絡めて語られることが多くなり
ました(し、ご逝去を知らせる記事に絡めた論評も、ほとんどがそうです)
が、その出発点に何があるのか、ということを、一部でも
最初に確認できていた、また、ご本人の私生活と露骨にリンクしていない
作品から入ることができたのは、幸福な出会いだったと思います。
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