1969年、グルジア(現在の呼称:ジョージア)映画。
日本では、今回は37年ぶりにデジタルリマスター
版で上映されています。 岩波ホールらしい企画。
ピカソも絶賛したと言われるその作品群は、
一度見たら忘れられません。
よく言われることですが、「天才は故郷では認め
られない」という話の典型のような人生ですね。
映像は、「もしこの場面で何も動くものが無かったら
これもピロスマニの作品(絵画)なのかな」と思わせるもので
ここがこの映画の魅力の一つ、というか、彼が描いたものと
不思議にシンクロして進んでいきます。
また、第一次大戦前、ロシア革命前のこの国の様子を
知ることができる、という意味でも貴重だと思います。
どの人間も、「はしゃぐ」「感情の爆発を見せる」ということが
まずありません。 ピロスマニの繊細極まりない心を通して
世を映しているからかもしれませんが、不気味に哀しく静謐です。
ルソーと同ジャンルだと括られることもあるようですが、
個人的にはそのテイストは異なるもの、交わらないものだととらえています。
これからどれだけ地方の映画館で上映される予定なのか気になっています。
筆者後記:
ちょうどこの映画『ピロスマニ』が制作された年に、
日本では『男はつらいよ』が誕生した、と知りました。
山田監督が朝のNHK番組に出演し、黒沢監督から
言われた、という次のようなことを紹介されており、
なんだかジンときたところです。
「映画も窯変が起きるよ」
フィルムを繋いで(作品が完成して)しまったら、
監督でさえわからなかった`一人歩き’をし始めるよ、
ということですね。 深い。他の世界でも同じ。
投稿情報: Calvina | 2015/12/05 15:01