憲法記念日に合わせて何か読みたい、と
探して、連休前半に一気読みしました。
書評は以前からあちこちで読んでいたのですが、
いやはや、実際のエピソードそのものが、もう
作品の出来の8割くらいを占めている印象の作品。
(書評の中には「半々だ」と紹介しているものも
ありましたが。)
最後の命を燃やして書かれた遺書を、(検閲が厳しいので)彼を慕う
仲間たちが暗記して、終戦後10年以上経って妻と家族に届けた、という
実話。 強制収容の状況、隠れて続けられていた句会の様子や作品群の紹介も。
多くの読者の人生や人生観を変えてしまったあの名著『夜と霧』のように
日本人の捕虜たちに関しても、過酷な時を長く過ごした有名無名の人たちの
数限りないエピソードが残っているのだなあ、と改めて思います。
この遺書の内容は、昭和という時代を生きた人たちから次世代を担う
日本人へのメッセージとして、素直に捉えることができると思いました。
また、真の人格、知性、教養とは何ぞや、という永遠の問いへの
解答例の一つが、この中にあるのかもしれない、という想いも。
「もはや戦後ではない」とさっさと言ってしまった人がいたのは、はるか昔。
「あらら、もう戦前になっていた」ということになってしまいそうな
今日この頃だ、と危惧する人も多いと思います。
同テーマで検索して見つけたコミックもチェックしてみる予定です。
※ 『収容所(ラーゲリ)からきた遺書』 辺見じゅん・著
文藝春秋 1989年6月初版
文春文庫 1992年6月初版
ISBN-13: 978-4167342036