エストニアやラトビアの話を耳にする度に
一度訪れてみたいと強く思います。
古い時代の北欧の様子が未だ残っているようで、それを見たい、
というよりも、その中に入って行ってみたいのです。
梨木香歩さんのこの本、文庫に入ってから持ち歩いて
何度もあちこち開いては読んでいます。
紀行文は、書けそうで書けない、とてもデリケートなものだと
この作品を通してあらためて思い知らされるのですよ。
印象の捕まえどころ、そして、筆の具合・・・。
「車を停めてもらい、外へ出た。
停めてもらって、よかった。
車窓からだと目に入らないような花が、
草の中にたくさん隠れていた。
道路脇だというのに、草いきれの混じる空気には、
寂しいくらいにひと気がなく、それが潔く清々しい。
いつも思うのだが、観光のために構えない、
こういう何気ない路傍にこそ、その国の自然の本質が
現れているような気がしてならない。」
おかしなお爺さんや、不気味な宿のエピソードなどを読むと、
「あぁ!どこへ行っても、似たようなことがあるのね!」と
も思えてきます。
※ 『エストニア紀行 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦』
梨木香歩・著 新潮文庫 550円+税
2016年6月初版
ISBN978-4-10-125342-8
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