5ヶ月遅れて原作を読みました。クリスマスを
目前になんとも重いテーマですが、今だからこそ。
早くから広く読まれ、著者も長生きした『夜と霧』
とは違って、本作を書き上げた3カ月後に著者は
亡くなり、作品も半ば埋もれておりました。
初版は1947年ですが、著者の意向ではなく当時の諸事情から
あちこちに手を加えられた(削られた)ものだったようです。
フランスの出版社によって原稿が発掘され、ドイツ国内で
(ドイツ語で)完全版が刊行されたのが、なんと2011年ですと。
本や絵画などは、形が残ることで、携わった人たちの仕事が
後年改めて高く評価される可能性があるのも魅力の一つですね。
映画を(先に)観て不思議に感じていたことは、夫婦の共同作業のように
見える主人公の行動と、原題「誰もが一人で死んでいく」との乖離でした。
原題は登場人物の一人(音楽家)の次のような言葉とリンクしていました。
「私たちは一人一人別々に行動するしかなかった。
そして、一人一人捕らえられ、誰もが一人で
死んでいかなければなりません。
でも、だからといって、私たちの死は犬死ではありません。
この世で起きることに無駄なことは一つもありません」
孤独や病や悩み・苦しみによって、年末年始の浮かれ気分を
さらに強い痛みとしてしか感じられない方もおられることと思います。
楽しいことや華やかなものの裏に何があるのかをジーッと観察する頃。
ところで、ファラダの本名、ファーストネームは、なんと、
あの「赤鼻のトナカイ」と同じ、ルドルフ(Rudolf)。
一人だけみんなと違っていたルドルフなのでした。
実際にはファラダのほうがずっと早くこの世に誕生していたのですが。
※ 『ベルリンに一人死す』 ハンス・ファラダ・著
みすず書房 2014年11月初版 4,500円+税
ISBN978-4-622-07703-9
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