ひと月ほど前、どうしても観たい映画があって
繁華街の真ん中に位置する映画館へ出かけたら
夜の上映だったこともあるのか、観客は3人でした。
その後、もう一本、どうしても見逃したくない映画のために
電車で郊外まで出かけたら、これも夜の上映でしたが
なんと、観客は私一人きりでした。
鑑賞中に、南ドイツ・ノイシュバンシュタイン城の主、
とんでもなく変り者だと言われたルートヴィッヒを思い出しました。
夜中に急に思いたち、馬車を仕立てて町まで出向き、
劇場を開けさせて、一人きりでオペラを鑑賞した、
というエピソードを映画の途中で思い出し、
映画の進行に集中しようと思ってはいるものの、なんだか
この王様のことで気が散ってしまい、落ち着かないまま
上映が終わってしまいました。
出口では、(マニュアルどおりなのでしょう、)従業員の男性が
頭を深々と下げて「ありがとうございました」と送り出してくれて
それがとても居心地悪かったのでした。
映画館も劇場も、まだまだ受難が続いています。
一般に名の知られた芸能関係者はともかく、非正規労働者が多い
この業界で生計を立ててきた人たちや、彼らによって育まれた
貴重な文化のことと、この国が公的な支援の手をこの業界へ
ちっとも差し伸べないこととを、何度も考えずにはおられません。
特に、ウイルスが広がってからは、防疫や治療、経済のことでも、
私が興味を持ってきた分野への支援のことでも、日本の政策と
海外の事情や救援策とを比較することが多くなりました。
心が痛むだけで何も解決できないので、こういう心の動きを
封じるほうが楽なのかな、と思う反面で、この類の心の封じ込めが
「国民の妙な我慢・忍耐の総意」と化していくのはマズイな、とも
考えています。