日本では今春訳書が刊行された、フレッシュな
女性弁護士の活躍物語なのですが、これが
美人で正義感が強いのだけれども大酒飲みで
自身の離婚問題をひきづって生活も荒れがち、
という設定です。舞台はソルトレイク・シティ。
惜しまれつつ幕を閉じた、英国のジャック・フロスト警部シリーズ
(R・D・ウィングフィールド・著)的な面白さがあり、一気読み。
本作の著者・ヴィクター・メソスは、アフガニスタン生まれ。
ユタ州(州都:ソルトレイク・シティ)で腕利きの弁護士として
活躍しながら小説を既に50作以上も発表しているそうですが、
日本で翻訳版が刊行されるのはこれが初めてになります。
大統領選挙が間近に迫るアメリカ合衆国の動きが次々に報道されるなか、
最近もまた白人警官が黒人を撃って波風が激しく立っていますね。
本作の中で主人公が係わることになる裁判も、知的障害を持つ黒人少年が
麻薬密売容疑をかけられる、というもので、他に紹介されるエピソードも
含めて、著者が実際に目の当たりにしてきた事例を元にしているという
ことです。アメリカで本作が発表されたのは2018年ですが、(上記の選挙や
事件のような)タイムリーな要素も加わり、いろいろ考えさせられました。
そして、読後にささやかな「私も共に闘った感」と希望が残りました。
蛇足ですが白馬の騎士的な主人公のサポーターがまさに絵に描いたようでした。
※ 『弁護士ダニエル・ローリンズ』 ヴィクター・メソス
早川文庫 2020年4月初版 1,060円+税
ISBN978-4-15-184051-7