『みをつくし料理帖』の主人公・澪ちゃんも
そうでしたが、大阪から江戸へうって出て
成功を勝ち得る女性の波乱に満ちた物語です。
着物の知識が乏しいうえに、商才にもご縁がない
私でも楽しませてもらっています。
なかなか進まないのですけれど、ね。
いつもいつも、手を差し伸べてくれる人、知恵を授けてくれる人、
温かい言葉をかけてくれる人が現れて、首の皮一枚で繋がる、という
展開なのだけれど、その大元には、「他人さまにはもちろん、
自分自身にも嘘をつかずにどこまでも誠実に毎日をおくる」姿勢があり、
それが必ず誰かに認められ、福を引き寄せる定石になっています。
読者はそこに慰められ、励まされる、というわけですね。
選び取られ、使われている言葉も美しいので心地良い読書です。
「新たな盛運の芽生えは、何もかも失った時、既に在る」
(『菜根譚』から引用されるキーワード)
今年の数々の災厄や困難の中にある私たちに、いっそう沁みる最新刊。
それも充分に意識して準備された本篇なのでしょう。
※ 『あきない世傳 金と銀』(9) 淵泉篇 高田郁・著
角川時代小説文庫 2020年9月初版 620円+税
ISBN978-4-7584-4361-6
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