第164回直木賞受賞作品。
もう受賞から1年半も経過しているというのに
今頃やっと図書館の予約の順番が回ってきました。
うらぶれた人間の吹き溜まりになっている長屋。
いろいろな事情を抱えた人たちに関する短編が
並んでいるだけかと思いながら読み進んだら・・・
最後にピリリと全体がまとまっている、という
巧みな構造。 ‘賞とり’の技、とも言えますか。
現在の社会における重苦しさ、生きることの哀しさは、
この物語に設定された江戸の街にうごめいていたものと
何も変わっていないんですね。
個人的には、息子を溺愛する母親の様子に背筋が凍りました。
この作家の他の作品も読んでみたいと思っています。
最近、現代の物語をそのまま読むのが苦し過ぎて、それが別の
時代や土地に置き換えられたのかな、という作品の方へばかり
興味が向いています。
※ 『心淋し川』 西條奈加・著
2020年9月初版 1,600円+税
ISBN978-4-08-771727-3
コメント