韓国民話から生まれたバレエ作品『沈清』(シム・チョン)を携えての、
今夏のユニバーサル・バレエ日本公演が、
本日(9月20日)をもって終了しました。
初日(於:東京、8月30日)と最終日の公演(於:宗像市)を、
文字どおり、目を皿のようにして観ました。
(以前に観た)現団長のジュリア・ムーン、初日のファン・ヘミン、
そして、最終日のアン・ジュン。
三者三様の役づくりと表現で、パフォーマンスのどこに、
どのようなピークを持ってくるのか、といったことも、微妙に異なっていて、
それぞれ楽しませてもらいました。
決して、足が高く上がること、手足が長く美しいこと、
たくさんクルクル回ることが、心の琴線に触れるとは限りません。
ただ、静かに目線を落として舞台に立っているだけで、
観客のこころを揺さぶることだって、できる。それが芸の力です。
目の見えない老父が、シーンと静まった舞台の端から、
「コツコツ・・・」と杖を頼りに、国王と沈清の前へ、よろめき出てくるシーン。
(もちろん、話の筋に沿って、すべての役がしっかり語り尽くされている、
という土台があったうえでのことですが)
これだけで、しっかり涙をそそっていましたね。
『沈清』という作品自体が、哀感をたたえた主題のメロディーとともに、
日本の観客の間にも、さらに染みとおっていくことを願ってやみません。
何度観ても新たな発見がある作品こそ、
踊り継がれ、語り継がれ、真の古典となってゆくものだと思います。
この作品が、そうなれば、とてもうれしいことです。