りんごは、酸っぱいものがりんごらしくて好きです。
お菓子のように甘いりんごには、あまり興味がわきません。
お菓子をつくる際にも、すでにお菓子のようなりんごでは、
うまくできないこともありますし。
ちょうどりんごの季節に、
ドイツの野山を縫うように、ポンコツの車で
ドライブに連れ出してもらったことがあります。
丘を越えると、野原の真ん中に、突然、1本の野生のりんごの木が。
「こういう時のために、ちゃーんと車に積んでいるものがある!」と
ドライバー役の友人。
トランクから出てきたのは、人が一人入れるような、ぼろ布の袋でした。
小さな酸っぱい野生のりんごを、せっせと拾って積み込みました。
その晩から、アプフェル・シュトルーデルやジャムや、ソースなどなど、
たんまり堪能させてもらったのは、忘れることができない思い出です。
スウェーデンでは、「モス」という、緩めのアップルソースを
ドカンと大きな瓶詰めで市販しています。
日本でいう業務用サイズの瓶を、家族であっという間に
使い切ってしまいます。びっくり。
果物のソースは、その甘みや香りを、肉料理と合わせて
さらに引き出そう、とする使い方が、一番彼ららしいかなあ、と思います。
私は、胚芽クラッカーやパンケーキなどにのせて食べる方が好きかな。
自分で野生のりんごを煮てソースを作る際には、わざと糖分をおさえて、
出来上がりに少し蜂蜜を混ぜたりもしています。
野生の実は小ぶりですから、皮や芯を取り除くだけでも、
手先が皺々になってしまいますが、出来上がりを想像すれば我慢できます!
ざくざく切った実を焼きこんだ簡単りんごケーキに、
シナモンやカルヴァドス酒を利かせたものも、大好きです。
帰国以来、この季節になると、一生懸命に品種を選んで
料理してみるのですが、
やはりあの夢の中で味わったような野生の味と香りには
どうしても手が届きません。
「私はやはり、夢の中で一時期を過ごしたのだなあ」と。
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