「土壌や気候が変化し、
蚕が食べる桑の葉が変化し、
繭からとれる糸も(太いものに)変化し、
染料も変化し、
ものづくりの工程も変化し、
そして、人々の意識や価値観が変化しているので、
同じような絹の着物でも、昔のものと今のものを比べると、
手触りも発色も全然違うの。
他人が一度着たものを、なんで今さら、と嫌う人には無理だけど、
古いものの良さをわかる方が喜んでくださると、私もうれしいの。
軽くて、幅広い気候に対応できて、これでヤボくさくならないような
デザインで創ることができれば、素敵よねえ。
他の人とおんなじものは、やっぱり嫌かなあ、という女ごころも
もちろんずーっと持ち続けているのよ!」
こんな友人(60歳くらい!)の生み出すワンピースやスカート、コートは、
私の宝物です。(たくさんは持ってないけど・・・)
新しいファッション雑誌や、街をゆく若い女性の服も、いつもチェック。
日本が世界に誇るデザイナーたちの作品を、
型紙からおこして、何度も実験してみたりもしているようです。
一方で、幼い頃から日常的に着物を身に着けていた経験から、
自分の身体で、本能的に着物地をよく知っているのです。
触っただけで、どういう具合に鋏を入れて縫い合わせると、
どのように生地が流れ落ちるのか、ということまでわかるなんて!
「更生」「リフォーム」という言葉、彼女の仕事には、当てはめたくない気持ち。
例えば、「切りビロード」という、模様の浮き出た素材、
昔はお出かけ用の羽織などに仕立てられていたそうですが、
私は、この人から教えていただくまで、まったく知らなかったのでした。
どこまでも柔らかく、しなやかな素材です。
ヨーロッパで見かける屋根のレンガの色を含んだ、甘い一癖ある赤色。
テッセンを連想させるツルの這う花柄が、控えめに浮き上がって見えます。
この切りビロードの半コートを、くしゃくしゃっとはおって、
静かに落ち葉を踏んで歩くのを、楽しみに待っているところです。
(心躍る時にこそ、おろしたいじゃない? 新しい服は。)
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