テート・ブリテンという美術館をちょこっと覗いたのは、はるか昔のこと。
重要なコレクションは、実はほとんど観ていませんでした。
(別のことに忙しくて、ふらふらしていたので。)
イギリス生まれで、早くから名声を欲しいままにしたという画家、
ジョン・エヴァレット・ミレイ(Sir John Everett Millais)の本格的な回顧展が、
イギリス、オランダを経て、現在日本で公開されています。
フランス、スペイン、イタリア、オランダなどと比較すると
「イギリス生まれでイギリスが世界に誇れる画家とその作品」というのは
どうしても数が少ないように思いますが、このミレイの『オフィーリア』は
W.シェイクスピアの『ハムレット』の一場面を描いた傑作として
かの国が世界に誇る傑作のひとつに挙げられています。
絵画にあまり興味がないという方にも、見覚えがあるかもしれないくらいです。
(ま、国別にこのような比較をすること自体、あまり有益ではありませんが。)
ハムレットの恋人、オフィーリアは、
父親をそのハムレットに殺されて正気を失い、
歌を口ずさみながら川にのまれ、命を失います。
戯曲として読む時、また舞台上で劇として鑑賞する時には
彼女が沈んでゆく場面は、目撃した別の人物の口から語られますが
ミレイは、そこをリアルに、そしてどこか怪しく描いて見せました。
オフィーリアが美しくて可憐なほど、ジンと胸がつまる瞬間です。
(他にも何人もの画家が、この場面・テーマに挑戦しています。)
ミレイのコレクション(回顧展)は、
北九州市立美術館(08年6月7日~8月17日)、
Bunkamura ザ・ミュージアム(8月30日~10月26日)の
二箇所のみで公開されます。
・・・「二箇所のみ」と言っても、
オフィーリアさんたちの滞日期間は、随分長いのですねぇ。
他にも何点も、ミレイの素晴らしい作品が来ていますが、
『オフィーリア』は別格(国宝クラスと考えれば良いのかしら・・・)らしく、
その絵のすぐそばに警備員が立ち、睨みをきかせていましたし、
他の作品のように間近まで寄っては鑑賞できません。
また、額(作品の表面)にはガラス(あるいはアクリルでしょうか?)が
はめ込んであり、これがスポットライトを浴びると妙な具合に光るので
近眼気味の私には、細かいところが見えませんでした。
(このガラスの反射は、いつもの問題点ですが、なんとか解決して欲しいものです。)
例えば、オフィーリアの首の周りには、スミレの花が散っていますが
それもハイビジョンの画像のほうがはっきりと見えました。ちょっとがっくり。
ともあれ、素晴らしい絵の前に立ち、好きなだけ時間をかけて
鑑賞できる幸せを、久しぶりにかみしめたのでした。
今回、以下の二つのことを新しく学びました。
1.ミレイも「作品自体にかける時間と同じくらい、
その作品につける題名にも時間がかかる」と言っていたこと。
2.ミレイ、ミレイ、って呼ばれていますが、Sir(サー)の称号を
もらっていて、世の中の渡り方も絵によって得た収入も
結構良いものであったということ。
※「『オフィーリア』って、どんな作品だったかな」という方は
こちら↓↓↓からご覧ください。「あれ。見たことあった」とおっしゃるかも。
http://www.bunkamura.co.jp/museum/lineup/08_jemillais/index.html
※北九州でご覧になりたい方は、こちら↓↓↓の情報を。
http://kmma.jp/
10年以上前にテート美術館展で、観ました。なぜか、2回も。あれから10年以上もたったけど、オフィーリアは変わりません。。。
投稿情報: konomi | 2008/08/01 19:09
konomiさん!
夏バテしておられないでしょうね??
そう。オフィーリアは年をとりませんね。
同じ絵の前に何度も立つ、というのは、素敵なことだと思います。
投稿情報: calvina | 2008/08/01 20:25