「誰にでも、生まれた土地以外に、
不思議と惹かれ、愛するようになる
そんな大切な場所がありますね」と
稲垣さんはおっしゃいました。
稲垣さんにとっては、デンマークとはそのような場所です。
この本の中の写真もね、彼女の大切な思い出の中に
そっと入り込ませてもらっているような
そんな味わい深いものばかりが散りばめられています。
この人が綴られたものを読む時にいつも思うことは、
対象そのものをストレートに書き表そうとしている、というよりも、
対象に自分から光を放射して、そこから照り返すものを受け止め、
それを自分がどう捕らえたかを書こうとしている、というような、
つまり「稲垣テイスト」が常に生きている、ということです。
そのために、作風に好き嫌いが生じるリスクもあるかもしれませんが、
私はそのことから、稲垣さんが、個人的にお知り合いの
‘○○さん’のことを書かれていても、
非常に個人的なエピソードや趣向について語られていても、いつも、
部外者である読者が、「自分の大切なもの」に感じる‘何か’に
ダブらせて理解することができる、というような効用があるのかな、
と思っています。
※『北欧の和み』 稲垣早苗・著 アノニマ・スタジオ
2008年9月初版 1,600円+税
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