渋くくすんだ色の着物を素直にするりと着た非常に年配の女性。
少し前からずっと、私の目の前を一人で歩いて行きます。
目的地も同じであることが、まもなくわかりました。
美術館の玄関近くまで来ると、巾着から取り出したものが・・・
まさかとは思いましたが、それは最新のデジタルカメラでした。
失礼ながら、まったくそのような機器とは無縁だと思われる
とても古風な方だったので
そのつもりはなくても目が釘付けになってしまい、
それが本人にすっかりばれてしまいました。
「ここに来るのは初めてだし、空が青くて素敵な構図。
忘れずに、しっかり撮っておかなくちゃね」と、
その人は、私に向かって茶目っ気たっぷりにそう言ったのです。
何故だか胸の奥がじんわりとあたたかくなりました。
こういう歳の重ね方って、なんだか勇気付けられます。
その構図とは、だいたいこのようなものです。
(ご本人のは、もっと素晴らしいに違いありません。)
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