外交官の家に生まれ、12歳で海外へ出て以来、
この人の思考や生活の基礎は日本国内には無いように思えます。
ロンドンでの生活も長くなり、今年6月には大英帝国勲章「ディム」の称号を
授与されることも決まりました。
だから、久しぶりの「帰国」ではなく「来日」なのです。
生演奏を聴き、本人がどんな感じで動く人なのかを観察したくて、
コンサートの直前に、あたふたとチケットを入手しました。
(ラッキーなことに、キャンセル・チケットが1枚ゲットできたのです。)
1948年生まれということですが、もうばりばりに元気な身のこなしで、
しゃかしゃか出てきたかと思うと、元気に椅子に座り、いきなり弾きだします。
身体を折るお辞儀の角度がひどく深くて、「がばっ」と音がするような感じ。
アスリートが齢をとったような印象でしたね。
クラシック音楽家にもいろいろタイプがあって、女性の場合は
優美な印象を見た目からも感じさせることに力点を置く人もいます
(こっちにばっかり気合が入って、演奏はスッタリ、という人もいます)が、
内田さんは、もっときっぱりとしたご性格のようで、
「あたしゃ、こんな風に弾きたいんです!」という意思と主張が
とにかく全面に出れば、それがすべてだ、というタイプのようです。
「ミス・ストロークかな」と思われるものもすべてひっくるめて内田さんの主張なのでした。
ISSEYのプリーツの服を無造作にひっかけている感じも、
内田さんの人生観、時代を観る目、そして審美眼をあらわしているようでした。
「スターター」のモーツアルト ピアノ・ソナタ(第8番 イ短調 K310)は
エンジンがかかりにくい感じでしたが、徐々に語りは滑らかに移行し、
「結び」のシューマン 幻想曲(ハ長調 0p.17)は甘やかな夢のようにとろけました。
(こんな生演奏で居眠りしたら、至上の幸福が得られそうです・・・)
クルターク(クルターグ・ジェルジ/1926年ルーマニア出身のハンガリー人作曲家)の
『遊び』という作品には初めて出会いました。
抽象絵画を連想させる知的な心の遊び。
ピアニッシモ! 涙が出るほどに美しい内田さんのピアニッシモを、
また生で聴きたいものです。
ピアノ・コンチェルトも、いつかね!
※ 内田光子さんのプロフィールおよび今秋の演奏会スケジュールは、以下から。
11月21日(土)は豊田市、24日(火)と27日(金)は東京にてコンサートを予定。
http://www.universal-music.co.jp/classics/artist/uchida/uchida.html
コメント