「まぁ!お久しぶり!」と街中で声をかけてくださったのは
もう5年ほどお会いしていなかった、ある店のオーナーでした。
「私ね、若い人にお店を譲ってから随分経ちます。
ここしばらくは、好きな料理と山登りだけを楽しんでいたんですよ。
ずっと忙しかったし、もう還暦ですから、元気で好きなことが
できるうちに、しっかり楽しんでおきたかったの」
もともと小柄で華奢な方でしたが、以前に比べると
肌もツヤツヤとより健康的で、体型は変わらず、
むしろエネルギーが身体全体に満ちているように見えました。
「こんなによく笑う人だったかな」と驚きました。
淡いベージュのシンプルなTシャツの上から、
やはりベージュ系の綿混のボタン無しカーディガン。
胸元は、大きな大きな安全ピンのような、そっけないブローチ
(のようなもの)で、うまく留めてあります。
ボトムは・・・膝小僧がぎりぎり隠れる丈のパンツ!!
鍛えた自慢のふくらはぎが見えるようにという計算があるのでしょう。
薄めのダンガリーに似ていますが、もう少しだけ光沢がある素材。
足元は、厚地の無地のソックスに、皮のしっかりしたスニーカー。
柔らかく粒の細い髪は、明るい茶色。
肩よりも長く伸ばして、ゆるくウェーブをかけてあります。
シンプルなピンを4~5本使って、前髪を無造作に
捻り上げているので、おでこもすっきり。
「じゃ、また、元気でお会いしましょうね!」と言い残して
小さなリュックを片方の肩にひょいっとかけたその人は、
風のように見えなくなりました。
コメント