ブティックの等身大の鏡の前で、年輩の女性が薄地ニットのコートを
試着しながら考え込んでおられました。
シンプルな丸首ロングカーディガンのような形で、ウエストよりも少し高い位置までが
ベージュの無地。 そこから下は、北欧のテキスタイルに使われることが多いような、
単純で力強い植物柄が、ベージュと黒だけで切り絵のように浮かんでいます。
楽そうで、体型も見事にカバーされていて、長身のその方にとてもよくお似合いでした。
思わず「可愛いコート、お似合いですね」と、言葉をもらしてしまいました。
その人は、一瞬の間の後、にっこり笑いながら
「ありがとう。でも、いいえ、ですね。 「可愛い」とは違うでしょう。
「ちょっと洒落ている」とか「他にはあまり無い」とか、
別の言葉のほうが、しっくりくるのかな、と思うの」とおっしゃいました。
なるほどね。 「可愛い」という言葉を連発しないようにと心がけているつもりでも
私もいつの間にかその言葉に取り込まれてしまっていた、ということです。
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