バレエ・リュス(ロシア・バレエ)は、1909年にパリで旗揚げした
バレエ団です。 ニジンスキーをはじめとする伝説級のダンサーたちが
目白押しのうえに、例えば、美術担当にピカソやブラック、音楽に
ドビュッシーやサティ、台本にコクトーらを使うなどなど、
どこをとっても当時の超一流のものを揃えた総合芸術の宝庫でした。
富豪・ディアギレフに率いられた黄金期を経て、彼の死後(1929年)、
余韻的な活動はあったものの、結局は消え失せてしまいました。
もちろん、バレエ関係者たちの間では、熱心な検証やその記録、
また、残された品々を探してコレクションするなど、なんとかその
消えゆく運命にある舞台芸術をとどめようとする活動が
今日に至るまで各地で地道に続けられてきましたし、リュスの
蒔いた種から、新しいダンスの流れが生まれてきたのも事実です。
バレエ・リュスに対する敬意、そして愛情は、消えなかったと言えます。
東京の国立新美術館で、そのリュスの衣裳のコレクションの公開が
スタートしました。
ヨーロッパからではなく、これがオーストラリア国立美術館から来た
ものであることに、これまた驚かされます。
バレエ・リュスが世界ツアーでかの地を訪れた際、彼らの公演が
当時の文化人たちにどれほど強い衝撃を与えたのか、ということが
ここから推測できます。 それが本コレクションの原動力になったようです。
ダンス関係者や、その歴史を辿ってみたい人だけではなく、
服飾やデザインに興味がある人にも、ぜひ観ていただきたいと思います。
木綿や絹やウールなど、天然素材で作られた衣裳は、ある意味で
身体表現(特に身体の可動範囲)を限定してしまうこともあった
でしょうし、踊り手には必ずしも快適ではなかったかもしれませんが
化繊やエラスティック素材が当たり前の現代の衣裳には見られない
細かい縫製上の工夫がふんだんに盛り込まれていて、前から後ろから
時には下からも、ぐるぐる回り込んで観察する楽しみがあります。
何度も使われた衣裳、丁寧に繕われたその様子からも、舞台芸術に
かかわった多くの人たちの命と想いをくみ取ることができます。
美術・衣裳を手がけた人の中で私が好きなのは、
レオン・バクストですが、今回はこの人の原画が
絵葉書に商品化されたものが無くて、そこが
ちょっとがっかりでした。 (展示はあります。)
派手ではありませんが、とても素敵な道化のデザイン原画が来ています。
ご興味あれば、会場で探してみてください。
今夏の国立新美術館は、時間をゆっくり過ごすにはぴったりの充実度。
来週、9日(水)からは、パリ・オルセー美術館のコレクション展も
公開されます。 リュスの衣装展との二本立てでお楽しみいただければ。
合間にミュージアム・ショップのお買いものとお食事・お茶もどうぞ。
※ 『魅惑のコスチューム:バレエ・リュス展』
Ballets Russes: The Art of Costume
とき : 2014年6月18日(水)~9月1日(月)
ところ: 国立新美術館 (〒106-8558 東京都港区六本木7-22-2)
詳細 :http://www.nact.jp/exhibition_special/2014/Ballets_Russes/
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