副題「クロゼットの中の憂鬱」には
相当な磁力を感じますな・・・。
格安ファッションだけではなく、
ファッションだけでもなく、現代社会
そのものを考察しようとする試みです。
原書は2012年6月に刊行されていますので、
内容が新しく感じられるうちに読みたいと思って手に取りました。
そもそもブランド名にはあまり明るくない私ではありますが、
けっこう見聞きしたことのある名が具体的なエピソードと一緒に
紹介されており、「へー、あのブランドはもう無くなったのか」とか
「確かに布の重量を減らしたとしか思えない軽い服が増えたな」とか
「大量生産に向く単純な形の服が歓迎されるわけね」という具合に
いちいち納得しながら読んだのでした。
自分で一から縫うことはできなくても、どこかに手を入れたものを
大切に着てゆきたいなあ、と私は思っています。
この本の中でも、そういう行為の先にしか救いが見えないと
著者も感じているようでした。
このような手法で世の中を切ろうとする本は、日本では
制作の段階から既にあまり歓迎されないのかもしれないし、
世に出たとしても、日本人が書いたものであった場合には
本の内容以外のところで摩擦が起きそうな気もします。
※ 『ファストファッション クローゼットの中の憂鬱』
エリザベス・L・クライン・著 鈴木素子・訳
2014年5月初版 春秋社 2,200円+税
ISBN978-4-393-33332-7
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