枯れかけた葉っぱのような色の背表紙カバーに
見覚えがあるような気がして、亡くなった家族の
残した本棚を探して比べると・・・やはり同じ。
1950年に亡くなったオーウェルのアンソロジー。
大型本屋の片隅に、女性が好みそうなエッセーばかりを編集した棚を
見つけて以来ときどきチェックしているのですが、このオーウェルの
随筆、記事、書簡を編集した本を見つけてこの棚へ加えた人は
相当な切れ者だと見ました。 いったいどんな人だろう・・・。
一方、家に眠っていた方のこの本ですが、こちらは家族が古本屋で
拾ってきた跡があり、一部分だけマーカーでチェックされています。
今となっては、そうしたのが家族だったのか、もともとの持ち主
だったのかもわからなくなっていますが、そのことも含めて
想いが広がり、なんだか手放しがたいのですよ。
「人間とは何か? 人間が必要とするものは何か?
どうすれば自己をもっともよく表現できるか?
(略)
人間はぬくもりと、交際と、余暇と、慰安と、安全を必要とする
のである。 と同時に、孤独と、創造的な仕事と、驚異を感じる
感覚も必要なのだ。
(略)
人間が人間にとどまるためには、生活の中にシンプルなものを
多分にとどめておく必要がある・・・・・・」
こんな話ばっかりではなく、紅茶の淹れ方にこだわる様子や、
自然の描写などなど、`古さを感じさせないのに良きもの’の
魅力を生き生きととどめているものもたくさん詰まっています。
※ 『一杯のおいしい紅茶』
ジョージ・オーウェル・著 小野寺健・編訳
1995年1月初版 朔北社 1,800円+税
ISBN4-931284-05-1
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