年初にあたり、このエッセイ集の中に
「希望」と題された短文(初出不明)を
見つけ、またもやジンときたと同時に
「ああ、あの澄んだ鋭い目で先の世を見越して
おられたのか」と妙に納得もしてしまいました。
その一部を、ここに書き抜いておきたいと思います。
「いま私たち(人間)に最も必要とされるのは、
自分たちの文化や伝統を絶対視せずに、
相対化して見ることができる眼ではないだろうか。
そして、私たちひとりひとりの生き方がこの地球の命運を
いかようにも変えるのだという、人間としての自負と、
誇りをもつことだろう。
政治や軍事力に頼らない、小さな個々の生き方を連ねることでしか、
この状況を打開する術は無いようにみえる。」
遺された音楽作品よりも、文章のほうにより頻繁にお世話になる日々。
夢に武満さんが登場して「そんなはずでは」と憤慨しておられそうです。
巻末の年譜とCDディスコグラフィ(池藤なな子編)がわかりやすいのと、
装画(宇佐美圭司)もいかにも武満ワールドに似合っているのも
この本の魅力の一部だと思います。
※ 『時間(とき)の園丁』 武満徹・著
新潮社 1996年3月初版 2,718円+税
ISBN4-10-312908-5
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