下劣な言葉や言動の宝庫、それでも敏腕で
心温かいフロスト警部の活躍を紡ぎ出した
ウィングフィールド(英国 1928-2007)は
もともと寡作だったうえに 既に故人です。
テレビドラマ化されたものを、作者本人は
見たがらなかったそうなので、私も(今の
ところ)書籍のみで。 既読の作品を読み
返してから手に取りました。
最後だと知ると、惜しむ気持ちも働き、やたらとグズグズ読むのでした。
本屋さんの棚にも「ありがとう、フロスト警部!」と手書きポップが。
フロスト警部は上司からハラスメント的な嫌がらせを受けても
決してプツンと切れることがありません。
彼なりの抵抗方法、彼なりの忍耐があり、部下や同僚、警察のお世話に
なりそうな街の人たちとの気持ちの繋がり具合も独特で、どこか
心温まるものがあります。 読者も警部をいつの間にか応援しています。
書籍出版はなかなか叶わず、ラジオドラマのシナリオを書いていた人だ、
と知って、私もラジオ(音声のみ)でこのシリーズを楽しむ機会を
得られたらな、とも思っています。
朗読ではなくラジオドラマ。 日本では忘れられつつある文化。
先日、国会議員が車中で秘書に暴言を吐く様子(録音)が公開された
じゃあないですか。 他にも、警察の強引な取り調べの様子もそう。
プロの歌手が機上で乗客の気持ちを落ち着かせるために歌ったのもそう。
あれらもね、映像が無かったにもかかわらず、映像が存在した場合より
もっとインパクトがあったと思っているのは私だけではないですね、きっと。
※ 『フロスト始末』 "A Killing Frost"
R.D.ウィングフィールド・著 芹澤恵・訳
創元推理文庫 2017年6月初版 1,296円+税
ISBN-13: 978-4488291082
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