今夏、何と31年ぶりに、31歳の新鋭振付家によって
一新されたプロダクションをシネマ版で観ました。
いやはや。現代人に違和感無いストーリーとは何
か、というテーマを追求。 当然とも言えますが
動きやステップの難易度も上がっています。
この振付家、リアム・スカーレットの仕事をじっくり観るのは
初めてでした。 これからますます楽しみな人ではあると思いますが
私が個人的に好む「譜面が見える振付」というのとは異なりました。
「長めのフレーズの中に、入れ込みたい動きを詰める」という作風。
それから、第一幕の白眉であるはずの宮廷道化が消えたのも残念。
これまで道化を担った小柄な芸達者は、この版では「王子の友人」
という役回りで活躍させる、ということになっています。
そういえば、現代に存続する宮廷・王室には、道化はいないのだと
いうことをあらためて考えた次第。
この世、場合によってはあの世までを俯瞰して、生きている身と
知力を使いつつ、権威に対する直接の風刺を含むリアクションを
許される存在は、もう不要だとされているのでしょうか。
逆に、今こそ、そのような立ち位置の「知」を大切にすべきなのでは。
蛇足の感想として、ダンサーのことを少し。
ムンタギロフ(王子)は、哀しくせつない役が特に似合う人で
その容姿と気品、抜群で安定した跳躍力もたいそう魅力です。
ヌニェス(オデット・オディール)は、どこまでも知的な役作りが
できる人。超絶技巧でコレミヨガシに押してくるタイプではない、
こういうダンサーに常に敬意を払うカンパニーと見巧者が多く、
新陳代謝を繰り返す英国バレエ界の底力を、あらためて思い知らされました。
※ 英国ロイヤル・バレエ団 『白鳥の湖』 詳細は以下から。
ベテランの美術・衣裳担当者、ジョン・マクファーレンの仕事は
圧巻です。こちらもぜひチェックを。
http://tohotowa.co.jp/roh/movie/swan_lake.html
コメント