「巨匠によるオリジナルの焼き直し」として観るべきではないと
かなり身構えて観ました。
子どもの頃に観て得た衝撃・感激・やるせなさ等という感情は、
今から考えると、人種問題への知識が浅薄なものだった上に
形成されたフワフワしたものだったかと感じています。
そもそも、オリジナルの主役の一人、マリアを演じたナタリー・ウッドは
ラテン系ではありませんでした。
ロミオとジュリエット的な絵面の方が前面に出ていたと思います。
人気を博したチャキリス演じたベルナルドは、やはり、
新作のほうでは‘越えられなかった感’が拭えませんでした。
これを予想して「今回観に行くのをためらっている」という人も
いらっしゃるようですが、別作品、群像劇として鑑賞はして欲しいです。
折しも、他国にいきなり侵攻を開始した大統領もおられますが、
外交、内政、人種問題、貧富の差等々から生まれる人間の負の感情、
それらが引き起こす悲惨な結果は、ちっとも解消していない、という絶望を
重ね合わせてもおられたのでしょう、上映会場で同席した方々の中にも、
鑑賞中に涙を流す人が大勢見られました。
バーンスタイン(作曲)、ソンドハイム(作詞)両氏が元気でおられたら、
彼らの感想や意見も拝聴したかったな、と思います。
オリジナルでアニタを演じたリタ・モレノが、ずば抜けた存在感を
示しており、そのソロ歌唱だけでも鑑賞に大いに値します。
本作の振付は、全体に今の感覚に合わせたシャープでグルーブ感溢れる
ものになっており、ジャニーズの面々他、日本の芸能関係者たちも
大いに刺激を受けておられることと拝察します。
ただし、オリジナルのポスターで常に
使用されてきた、あの「Y字バランス的な」
3人の若者たちのポーズを凌駕するような
ワンシーンは・・・本作を一度観た限りでは、
思い当たりません。そこは少し残念。
※ 映画 『ウエスト・サイド・ストーリー』
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