「川越の町を知らなくても、とっても楽しめるから」
と薦められて手に取った、ほしおさなえさんの
小説、『活版印刷三日月堂』。悪い人が登場せず、
芋づる式に幸福の連鎖が、というか、何やら
停滞していたり落ちこんでいたりする人たちの
人生にうれしいことが起こり、それが拡大します。
仕事や死についても、しんみりと深く考えさせて
くれて。
活版印刷にちょっとでも興味があれば、なお楽しめる作品です。
この中で紹介されている、八木重吉さんの『定本・八木重吉詩集』の中に
収録されている「雨」という作品を、以前から気にいって、自室の壁に
コピーをとめつけているのですが、それはまったく別の「傑作詩選」
みたいなオムニバス形式の本に紹介してあったものでした。
これが、やっとどのような作品のどこから選び取られたものなのかを
知ることもできたのです。
今回、せっかくのチャンスなので、まとまった重吉さんの作品集を読もうかな、
と、図書館へ行こうと決めた前日の夕方、なんと、自分の居所から一番近い、
小さな個人経営の古本屋で、その本を見つけたのです。もう、びっくり。
幸いに、コンディションも悪くなく、初版ではないので価格もそう高くもなく、
入手して手元に置くことにしました。昔の本は、装丁さえも素敵ですね・・・。
この夏を締めくくる、一番うれしい買 い物でした。
私も‘幸福の連鎖’のお裾分けをいただいたのでしょうか。
※ 『活版印刷三日月堂』 ほしおさなえ・著
ポプラ文庫 全6巻
※ 『定本・八木重吉詩集』 彌生書房
今回入手したのは、昭和62年11月 23版
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