友人から薦められて読んだ、川越が舞台の物語が
面白かった(未だ、繋がりのある作品をチェック
している最中です)ので、合間に、同じ作者の
まったく別の作品を読んでみました。
作者の古い家や植物に対する細やかな観察と愛情は
相変わらずで、本作は、その植物を刺繍で表現し、
自分だけの世界を確立していく途中の女性を
中心に描いたものです。
続きものではなくて、単行本にまとまっているので、こちらは読後感スッキリ。
天才的な美術家やクリエーターが複数登場して、
一種の特権階級、凡人には触れることのできない世界を見せたいのかな、
という気分に陥らないこともないけれど・・・。まあ、一話完結でスッキリ。
死生観については人それぞれですから、共感する人と
そうではなくてモヤモヤする人もいるのでしょうが
繊細でもろく崩れ落ちそうな美しさが沁みました。
調べてみると、この作品の初版は、題名と呼応しているのか、
クリスマスに発売されていたんですね。
※ 『恩寵』 ほしおさなえ・著
2008年12月初版 KDOKAWA 1,900円+税
ISBN:978-4048739023