尊敬する出版関係者が書かれた文章の中に
以下のような記述を見つけました。
「新年は、亡くなった人間を偲ぶためにある。
心優しい人が先に死んでいくのはなぜなのか、
なぜ自分だけが生き残っているのか、と問うためだ」
という詩人、中桐雅夫の言葉があります。
詩人、中桐雅夫(なかぎり・まさお)。
1937年、神戸で、同人誌『LUNA』のちの『LE BAL』を創刊。
第二次世界大戦で、青春をともにした親しい友人たちを失い、
戦後は新聞社の政治部記者として働きながら、書き続けました。
作品集を読むと、いつも「心が痛いよ」という彼の声が聞こえてきます。
紛争や天変地異、事件、事故、病。
今の世の中、「痛い」ことだらけ。「痛い」ことは無くなりません。
たくさんの、まだ会ったことさえない人たちのことに想像力を働かせながら、
その人たちにも、少しでも平穏で明るい年がくることを祈りながら、
私も「偲ぶ」という心の作業を、しんみりとやりたいと思います。
皆さまも、良いお年を。
※参考:
『中桐雅夫全詩』(思潮社・1990年)
『中桐雅夫詩集』(芸林21世紀文庫・2002年)