友人Sちゃんに誘っていただき、角野栄子さんのトークを聞きに。
テーマは一応「恋愛」なのでした。
「物語はどれも恋愛小説!」
「扉は終わりから開く!!」と。
トークのシメに角野さんが朗読なさったのは、アンデルセンの『人魚姫』。
帰宅してすぐに手元にある矢崎源九郎・訳(こちらの題名は『人魚の姫』)で
同じ部分を読み返してみました。
角野さんらしい選択だと思いませんか?
(以下、人魚姫がどうしても欲しいという飲み薬を、魔女が作る場面です。)
「魔法使いは、なべを火にかけて、魔法のくすりを作りにかかりました。
「まず、きれいにしてとね」
魔法使いはこう言って、ヘビをくるくると結んで、
それで、なべをみがきました。
それがすむと、今度は自分の胸をひっかいて、
黒い血をなべの中にたらしました。
すると、そこから湯気がもうもうとたちのぼって、
なんともいえない、気味のわるい形になりました。
そのようすは、まったくおそろしくて、ぞっとするほどでした。
魔法使いは、ひっきりなしに、なべの中に新しいものを入れました。
やがて、それがよくにたつと、まるで、ワニの鳴くような音をたてました。
こうして、とうとう、くすりができあがりました。」
成就しない恋愛。 あまりにも残酷に思えるほどに、儚く砕かれて消える恋心を
丹念に「これでもか」というところまで書こうとするその行為。
それ自体をとっても愛しく思えるんですよ、という角野さんのメッセージ
ではなかったかと、私は思っています。
「「絵本で読んだだけ」あるいは「あらすじを聞いただけ」という人は、
アンデルセンの原作をきっちり訳したものを読み直して欲しいんです。
思っておられるよりも、たぶん長い話なんですよ。
それから、(この本に限らず)声を出して本を読む、誰か大切な人と読みあう、
大切な人のために読んであげる、というのも素敵ねぇ」ともおっしゃっていました。
私もその意見には大賛成です。
心が破れそうにせつないものも、読む気力はあるんですけれどね、
今はもうちょい元気が出そうな、楽しい気分になれるような軽いものに
出会いたい心境。 何か‘お薦め’があったら教えてください。
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