とんでもない長寿番組に成長した『サザエさん』。
その名作を生んだ長谷川町子さんの妹・
洋子さんの著書。 一気に読めます。
『サザエさんうちあけ話』の、
そのまた『ホントのうちあけ話』という内容。
「おもしろかった。笑えるよ」と推薦する人が複数あったのと、
母が幼い頃に過ごした界隈で長谷川一家も過ごしていた時期があるので
そういうエピソードに興味があったのとで読み始めましたが
結論から言えば、決して楽しい本ではありませんでした。
国民に愛される笑いを生んだ長谷川一家は、父を50歳代で亡くすと
母と三姉妹の結束するある意味難しい家庭になっていきました。
(戦中・戦後を生き延びてゆくためには、結束は必要だったのでしょうが。)
『サザエさん』の大ヒットは、莫大な財産を生みましたし
生活に困窮するということはなかったようです。
ただ、家族関係がギクシャクしていた様子が
非常に遠慮がちにですが書かれています。
一つの事例を、姉妹が各々別方向から眺め、受け取り、消化すると、
まったく異なるものになってしまう・・・それは、しかたのないことですが、
それでもなお結束を解こうとしないという難しい構造。
世の中の仕組みや事情が今とは異なっていたということも考え合わせる
必要があるのでしょうか。
いえ、今でも似たような事例はあるような気がします。
当事者たちが亡くなるか歳をとったということで、
「今なら書ける」と、妹さんがやっと筆をとった、ということでしょう。
これは「控えめな暴露本」でもあります。
「一家に似たような才能、似たような仕事をする者は、複数要らない」
ということもあったとしたら、残酷ですね。 少し寂しくなる本でした。
(洋子さんが漫画を仕事にしたがっておられた、ということでは
まったくありません。 念のため。)
※ 『サザエさんの東京物語』 長谷川洋子・著
朝日出版社 1,200円+税 2008年4月1日初版
ISBN978-4-255-00420-4
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