右半身がご不自由な年輩の男性がバスに乗って来られました。
席を確保してしばらく経ったところで、男性の左手が
左頬の高さまで上がり、指先が小刻みに動き出しました・・・。
最初は、何かのご病気のせいなのかな、と思ったのですが・・・
よく観ると、指先は規則的に動いています。
・・・あれ、ギターのコードを押さえているつもりなのかな、と
思ったら・・・なんと、バイオリンの指使いのようです!
どのような人生を歩まれた人なのだろう、
その身体の中には、どのような音楽がどれほど詰まっていて、
今、この瞬間には、どんな音楽を奏でておられるのだろう、と、
その指先から目が離せなくなったのでした。
身体の中から湧き上がり、あふれ、こぼれ出る音楽。
自分以外の人の身体からそれがこぼれ出ているところが
見えるようだなあ、という瞬間に出会うと、わけもなくうれしくなります。
(イヤホンを耳に突っ込んで聴いているだけの人のことは、また別の話。)
(お見かけした男性は、音楽を職業としておられたのかもしれませんが)
普通の人たちの身体を通して音楽があふれる瞬間には、なにやら
神々しい力が感じられ、それが私の中の何かと呼応することもあります。