石田雄(いしだ・たけし)・東大名誉教授、91歳。
太平洋戦争に出征した経験を持つ政治学者。
朝日新聞に、先ごろ集団的自衛権についての投稿が掲載され、
17日にそれを受けた取材記事が大きく出ました。
学徒出陣から終戦までの軍隊生活の中で、「支配者から命令されれば
いつでも人を殺さなければならない状況にあったことが
非常に苦痛であった。命じられる人の身になってほしい」という
要旨(新聞の記事からそのまま引用しているのではなく、私の要約)です。
ここでは自衛権や憲法に関する議論に言及したいわけではなくて、
記事の中にあった次のような言葉にずっと気を取られている、
ということを書き留めておきたいのです。
「(石田氏は)美しい言葉で隠されていた現実を経験した
立場から、いまの安倍晋三首相の言説に危うさを感じる。」
この記事は記名原稿で、その名前は高重治香となっています。
「美しい言葉~」というのが、石田氏の発した言葉であったのか
高重氏の作文であったのかは、この記事からはわかりません。
「現実・真実を隠すために編み上げられた美しい言葉」は、
いつの時代も、どこであっても、私たちの周辺にごろごろ転がっていて、
いちいち気がつくとかえって苦しくなるので、気づかないようにしている、
あるいは、気づかないふりをしてばっかりなんだなあ、と。
「本当に美しい言葉」とは、いったい何なのでしょうね。
言葉を発すること無しには、人は生きてゆけないけれど
それらが本当に美しいのかどうか、立ち止まって考えることを
一生のうちにどのくらいできるかなあ、と考えてしまいます。