ジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・
バレエ団が来日しました。 どうしても
観たかった彼の作品『椿姫』全幕を
久しぶりにチェック。いろいろな意味で
うれしさも混じった涙が滲み出たのでした。
ノイマイヤー版は、1978年11月4日に、シュツットガルトバレエ団、
「女優バレリーナ」と名声を馳せたマリシア・ハイデの主演で
発表されました。 フレデリック・ショパンの名曲(ピアノソロと
協奏曲両方)を繋ぎ合わせながら、デュマの小説が見事に
ステージ上に浮かび上がる傑作で、その中の一部だけを切り取り、
ガラ・コンサート他で上演されることも多くある人気作品です。
このような`大人向け’のバレエ作品は、日本で全幕公演されることが
大変少ないのですが、今回はチケットの売れ行きも良く、熱心な
観客の反応や拍手が温かく、まさに長い時間をかけて見巧者が増えて
きた日本の状況を目の当たりにして、まずこのことに感動したのでした。
ノイマイヤーその人も、大変お元気そうに、若々しく見えて
これもうれしさが倍増する原因の一つでした。
先日も別の項で触れたとおり、生存する大物座付振付家は数少ないので。
ハイデが初演で踊ったタイトル・ロールは、他にも幾人かで観ていますが
今回のアリーナ・コジョカルは、繊細な感情表現を小柄な肉体で
巧みに、また強い意思をもって伝えてくれました。
小柄な相手役をリードしているようにさえ見えましたし。
私の中のハイデは、踊っていない時のほんの少しのポーズや動作で
まるで台詞を口に出しているような説得力をもって、その役や物語を
伝えることができる踊り手でした。 また、大柄でしたので、
コジョカルとはそもそもの出発点、というか、持ち味が異なります。
息の長い作品を、自分の持ち味で再演して成功することは、
本当に難しいことですが、バレエの世界では、それがずっと
繰り返されているのも興味深いことだと思います。
劇中劇風に織り込まれているマノン・レスコーとデ・グリューの
素晴らしい踊りと演技、日本人団員の活躍などにも魅了されました。
生のソロ・ピアノ演奏だけで見せる大人の感情の揺れ動きを
息を呑みながら大勢で見守る、という場面に居合わせる幸せを
久しぶりに噛みしめました。
コメント