14歳で見習いとして銀行に入り、
21歳で太平洋戦争が勃発。
終戦までそのまま東京に。
定年まで仕事を続け、家族・親族を
養いながらの詩作活動。
この人のことを知らなかったわけではないのですが、
しっかり読んだのは今回が初めてでした。
学歴が高く、エリートとして生きている人たちの「ゆたかでない
人間」(本人作より)の暮しに思いが至らないその様子を、
ごく間近でずっと彼らと共に仕事時間を過ごしながら
澄んだ目と心で観続けていた人。残された作品も、
日記の断片も、いろいろがうまく切り取られ、編集された本です。
弱者を救うことができない社会は、1920年生まれで2004年に
84歳で亡くなったりんさんの生きた時代から、あまり進歩して
いないように思えてならないのです。淋しいし、怖ろしいこと。
※ 『朝のあかり』 石垣りんエッセイ集
2023年2月初版 中公文庫 900円+税
ISBN978-4-12-207318-0