アメリカ大統領選挙の選挙運動の最中から、新大統領誕生後も、
このところずっと人種差別の問題が大きく浮かび上がっていますね。
ベル・エポック期にフランス・パリで初めて黒人の大道芸人
(クラウン)として注目を集めたショコラと、彼の相棒として
活躍した白人のフティットは、実在のコンビ(デュオ)ですが、
長い間その功績が忘れられていたのだそうです。
人気って、恐ろしいほどに淋しいものですね、やはり。
ショコラが「(黒人だから)笑わせているのではなく笑われている、
どんなに自分がアーティストだと主張しても、そう受け取っては
もらえない」という心の苦しみから逃れられず、私生活から命まで
駄目にしてしまう過程を、ていねいに淡々とフィルムに焼きつけ、
最後の最後には、本物のコンビの記録映像で締めくくる、という、
なんとも粋な佳作が、現在公開中です。
『ショコラ 君がいて、僕がいる』(2016年 フランス)
黒人の肌の色からつけられた芸名・ショコラですが、甘いばかり
ではなく、苦みを含んだ芸道、人生、社会の有り様をも思わせる
作品タイトルとなっています。
ショコラ役は『最強のふたり』で大変高い評価を受けた
オマール・シー(Omar Sy )。 素晴らしい笑顔と演技でした。
が!私はフティットを演じた俳優さんに、最初から
最後まで意識が吸い寄せられたまんまでした。
まさかの、喜劇王・チャップリンの実孫ですって!
ジェームス・ティエレ(James Thiérrée)。
写真のポーズからも踊りや体幹訓練の跡がわかる!
もう、最初にスクリーンにアップになった瞬間に、予備知識も
何も無いのに「そっくりな目元!」と血縁関係がわかったくらい。
しかも、未だ若い(1974年生まれ)ので、精悍で元気な
チャップリンがそこにいる!って感じで・・・。 あわわ・・・。
実際に子供の頃からサーカスにも出ていたという、素晴らしい芸の
持ち主で、サーカス・クラウンがこんなにピッタリな役者は
若い世代では見たことがありませんでした。
作品中のサーカス芸の部分では、彼自身のアイディアや振りが
生かされているようです。 ‘おじいちゃんの憑依’もあったのかしら。
彼が演じたフティットは、(日本の「やすきよコンビ」のように)
天才肌の相棒をどこまでも誠実に不器用に支え続ける、愛情と
我慢のかたまりのような性格。 それだけに、最後に流す大粒の涙が
もうどこまでもどこまでも哀しくせつなく迫ってくるのでした。
そのうち絶対にチャップリンの生涯を彼で撮ってもらいたい、
(できれば早くしてもらいたい!)と思っています。
食べるチョコレートならぬ映画『ショコラ』も要チェックです。