神童が大人になってからどのようにその才能を使い
世を渡っていくのか、さらにその才能は伸ばせるのか、
伸ばせるとしたならば、どのようにして・・・
というような疑問に関するある種の回答が、このプロジェクトに
絡んだヨーヨー・マの生き様だ、と読み取ることもできる映画。
でも、シルクロード周辺に生きる多種多様な民族文化が生んだ
音楽・楽器・奏者としての才能が結集し、研究やセッションを
重ねて生み出された新たなウィー・アー・ザ・ワールド的な
音楽表現を記録した映画でもあります。 インタビューの他に
30曲以上の作品と演奏の様子が散りばめられています。
マスコミが見向きもしなかった約20年前から、評価も上がりました。
この活動に参加したことにより、今度は各メンバーが‘個’に戻って
新たな音楽活動や、恵まれない人たちへの支援に乗り出す例も
あって、‘育っている’プロジェクトであることがわかります。
戦争や国情のために家族や親しい人たちを失い、現在もなお
母国へ戻れないメンバーもいます。
ルーツにあたる文化そのものが、消滅の危機に瀕しているメンバーも。
「人は愚かだ。決して学習しない。戦争も無くならない」と
絶望しがちな私たちに、人は未だ何かできるかもしれない、と
希望を与えてくれる作品でもあります。
最近流行って多用されている「ダイバーシティー」Diversity という
言葉って、いったい何だろうな、と考えこんでいた最中に観た映画
だったために、なおさら心に響いてきました。
できれば、この中で活躍する方々の生の演奏を、日本でもぜひ
多くの人たちに分けていただきたいな、と思います。
※映画 『ヨーヨー・マと旅するシルクロード』(2015年 アメリカ)
原題:The Music of Strangers
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