休日の朝の地下鉄は、混み合ってもいなくて快適だな、と
思いながら、隅に腰かけてまったりしていると・・・
斜め前の端に座っていた年輩の女性が、持っていた長傘を振り上げ、
向かい側に座っていた若い女性に尖った先を突き刺すしぐさを
見せながら「人前で化粧なんてしないでっ!みっともないったら!!」
と大声で叫んだのでした。
実際には、その人を本当に刺すところまではいかなかったのですが、
もうビックリ。
それでものんびり屋の私は、「母子なのかな。それにしても公衆の
面前で随分厳しいことするなぁ」と思いました。
ところが・・・若い女性は、能面のように表情を変えないまま
イヤフォンを耳に突っ込んで、次の駅でスーッと降りて行きました。
他人だった、というわけです。
怒りのおさまらない年配の女性のほうは、身なりも整っていて
何かに不自由しているようには見えない感じでしたが、
怒り、というよりは、哀しみをずっとこらえているような感じが
表情にも出ていて、こちらまで哀しくなってしまいました。
私も、人前や人ごみの中で化粧する人、他にも迷惑な言動を
見かけると、気分はまったく良くないのだけれど、今回は
どちらかと言えば、傘を振りかざしたほうの女性のことを、
何度も何度も考えています。
ちょっとしたきっかけで、胸に抱えている暗闇をコントロールできず、
その人の傘の先と同様に、他人を傷つけてしまう可能性が、今は
多くの人にあるのかもしれない、とも感じてゾッとしたのでした。