鳥ではなく烏(からす)。
(『下鴨アンティーク』は未読なので)
この作家の作品を読むのは初めてでした。
中国王宮の夢物語、ファンタジーで、
一冊で一応完結する内容です。
浅田次郎さんの『蒼穹の昴(すばる)』的な。 でももっと柔らかな。
コンパクトに完結してはいますが、このような壮大な物語世界を紡ぎ出し、
語り始めた人は、その壮大な世界全体を語り尽すまで筆を止めないで
欲しいなあ、と思いました。 続編を望む人も多いのではないでしょうか。
その世界の全貌が明らかになるまで、映像化やコミック化は
先に延ばして欲しいですが、特にコミック化には非常に
向いている作品なのかなあ、という印象も持ちました。
既に、この文庫本の装画が「そっちの世界」のものでありました。
挿画やイラストを付けずに、まったく別の本として世に出ていたら
またおもしろい歩み方、育ち方をした世界観なのかもしれません。
主人公は、自分が美しいことに気づいていない、あるいは
興味を示さない女性。 食いしん坊で手先も生き方も不器用です。
それから、ことあるごとに「ありがとう」と言います。
極上の龍井(ろんじん)茶を傍に、一気に読み通した雨の夜。
※ 『王宮の烏』
白川紺子(しらかわ・こうこ)・著
集英社オレンジ文庫 600円+税
2018年4月初版
ISBN978-4-680188-1