来月(09年2月)に上演予定のバレエ作品から
私のおすすめのものを少しご紹介します。
まず、英国・ロイヤルバレエ団のレパートリー、
『ピーター・ラビット』を、日本のバレエ団が上演します。
2月25日(水)~3月1日(日)
http://www.k-ballet.co.jp/index_02.html
最近怪我のことで報道されることが多くなった熊川哲也氏のバレエ団、
「Kバレエカンパニー」。
熊川氏が出演するか否か、ということにはまったく関係なく、
この作品はお子さまや「バレエ門外漢」にまで
生の舞台でぜひ観ていただきたいものの一つです。
英国版をフィルムに収めたものが、日本でもテレビで放映されたりしていますし
テレビ・コマーシャルに、そのアイディアの一部が使われたりもしています。
「カブリモノ」のバレエ、というと、観ないままに馬鹿にする人もありますが
何かを被ったままで演じる、踊る、ということの困難さを越えて、
物語の世界そのものを生き生きと見せてくれます。
* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * *
もうひとつご紹介したいのは、ドイツから久しぶりに来日する
「ハンブルク・バレエ」です。
このカンパニーの座付き振付家、ジョン・ノイマイヤーは、
モーリス・ベジャール亡き後、誰もが認める世界屈指の
‘敏腕振付家’という位置をますます不動のものにしています。
(というよりも、振付家が相性の良いホームグラウンドを得て
長期間カンパニーを率いている、という例は、世界的にも
数少なくなっています。
そのような才能、それを生かす基盤の両方が得られにくくなっているのです。)
2月の来日公演には、2作品を準備しています。
『椿姫』と『人魚姫』。
2月12日(木)~3月7日(木)
http://www.min-on.or.jp/hamburg2009/
『椿姫』(1978年ドイツ・シュツットガルト初演)は、
ショパンの曲にのせて展開するロマンティックそのものの世界。
「『白鳥の湖』のオデット・オディールが全幕で踊れる体力が無くなっても、
『ジゼル』やノイマイヤーの『椿姫』は、ぜひ踊っていたいわ」という
女性ダンサーたちが数多く存在することをお伝えすれば、
その美しさの一部がわかっていただけるのではないかと思います。
また、あまり取り上げられないのが大変残念なのですが、
ユルゲン・ローズというデザイナーのコスチュームと舞台のしつらえそのものも
古風で重厚で、どこかもの悲しく人目をひきつける魅力がありますので
ぜひ注目していただきたいのです。
『人魚姫』は、ノイマイヤーの本拠であるドイツ・ハンブルクではなく、
2005年に生誕200年を迎えたH.C.アンデルセンへのオマージュとして
コペンハーゲンで「デンマーク王立バレエ団」によって初演されました。
初演の舞台を観ましたが、モダンでありながら、そのモダンさというのが
抽象にひどく傾くことなく、どちらかといえば‘簡略’に力点を置いているように
私には見えました。
力強い単純な残像が観客の脳裏に長く残り、そこから各々の意識の中に
徐々に何かが育ってゆく、というような作品です。
明らかに、日本をはじめとする東洋の文化の影響も、色濃く見受けられます。
音楽は、『椿姫』とは対照的に、現代作品を使用していますが、
こちらも詩情あふれるものであり、「間」(ま)の美しさを表現しています。
『人魚姫』は、今回NHKホールでの公演が2度計画されていますので
テレビで録画を放映していただけたら、なおさらうれしいのですが。
※デンマークで初演されたときの舞台写真はこちら↓↓↓から
http://www.kglteater.dk/OplevTeateret/Galleri/Ballet/2005_2006/Den_lille_havfrue.aspx
以上、2カンパニーによる3作品、機会がございましたらご覧ください。