もともとは、15年も前に、雑誌『料理王国』で
連載されたものが単行本になり、なんと、今夏、
加筆されて文庫本になった、という、息の長い
本です。一応レシピもついていますが、
生活論として読むほうがおもしろいかも・・・。
坂本さんは、車のデザインから独学で陶芸家に転じた人。
料理も独学、というか、日々の生活の中で工夫を重ねて
身体に優しいご飯を毎日規則正しく作り続けている様子を
聞き書きの形で紹介しています。
毎朝手焼きのパンでゆっくりとる朝食から始まり、
出来合いのものが無い、手間をかけた食生活の様子が
なかなか楽しそうに思えてくるから不思議です。
「基本になる形があるからこそ自在ということが生じてくるのです。
いつも場当たり的というのは、それは自由放埓というものであって、
自由自在ではありません。
食生活に自分なりのスタイルを持ち、それを継続させる力があり、
なおかつそれをガラッと変える力もあれば、それこそ自由自在と
いうもので、生活がますます楽しくなってくると思うんですよね。」
(太字は私がつけさせていただきました。
食生活でなくても、生活全般に当てはまると思います。)
坂本さんの陶芸作品のほうは・・・
(私の場合)普段の生活で普通に使おう、というものではないかな。
これに関してもう一点、おもしろいなあ、と思ったことは、ご自分の
食事の際に、器のコーディネーションに関しても、きっとこだわりが
おありのはずなのに、本書には何も言及が無かったこと。
お人柄なのかもしれません。
文庫版に紹介された「15年後の話」もオチめいていて印象に残りました。
※ 『糖尿病S氏の豊かな食卓』
坂本素行・著 由良直也・聞き書きと構成
文春文庫 2016年7月初版 650円+税
ISBN978-4-16-790665-8